お酒は百薬の長?
「酒は百薬の長」という言葉があります。
つまり、お酒は薬よりも健康に良いという意味ですね。この言葉が出てきたのは『漢書・食貨志下』が最初の様で、「夫れ塩は食肴の将、酒は百薬の長、嘉会の好、鉄は田園の本」と書かれています(参考文献 1)。ちなみに、「徒然草」では酒は「百薬の長とはいへど、よろづの病は酒よりこそおれ」と皮肉が述べられています。
お酒はたばこと比べると少量なら健康によいイメージがあるかと思います。
そんな中、厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成しました。実は今まで日本には健康な人を対象としたガイドラインがありませんでした。
そこで、今回はこの「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を軸に解説したいと思います。
飲酒ガイドライン要約
まず、このガイドラインの対象と目的です。
対象は基礎疾患などがない20歳以上の成人です。目的は飲酒への身体への影響を理解してもらう事、となっています。
根本的に大切な事として、飲酒の身体への影響は個人差が大きいだけでなく、個人の状態による影響も強いです。その理由として、アルコールの分解がアルコール代謝酵素によって行われる事と、アルコールが影響を与えるのが全身の臓器であるという事です。
本人の問題としては年齢(高齢程酔いやすい、転倒などのリスクが上がる、若年者は脳の発達に悪影響)、性別による違い(女性はアルコールに弱い)、体質の違い(遺伝によるアルコール分解酵素の有無:すぐに顔が赤くなるかどうか)などがあります。
飲酒による影響は疾病発症のリスクと行動面のリスクがあります。
疾病発症のリスクとしては生活習慣病、肝疾患、がん、アルコール依存症などがあります。これは飲酒量にもよりますが、下記の様になっています。
アルコール量は「飲酒量」×「アルコール濃度」×「0.8」で計算できます。
アルコール量の目安は
https://www.asahibeer.co.jp/csr/tekisei/health/proper_quantitiy.html
これで換算できます。
また、この容量以下であれば一緒というわけではなく、少なければ少ないほどリスクが少なくなります。また、人によってはこの数字より少ない場合も多い場合もあり、これが先述の個人差です。
また、病気だけでなく、飲酒のリスクは行動面、つまり転倒や事故などにもあります。これらは飲酒時はもちろんの事、翌日にも影響がある事があります。こちらについては基準となる量は個人で差がありますが、飲まなければ勿論起きませんので、わかりやすいかと思います。
健康に配慮した飲み方としては、「自分の飲酒状況を把握する(問題飲酒のスクリーニングはこちら)」「あらかじめ量を決める」「飲酒前や飲酒中は食事をとる」「飲酒中は水を飲む」「休肝日を設ける」などです。
そして、当然な事ではありますが、未成年の飲酒や飲酒後の運転は禁止されていますし、妊娠中やお酒を体質的に受け付けない人は飲まない事が重要です。
そして、避けるべき飲酒状況としては、「多量飲酒(1回で60g以上)の飲酒」「他人への飲酒への強要」「不安や不眠を解消するための飲酒」「病気など療養中の飲酒」「飲酒後の運動や入浴」などが挙げられています。
という所でまとめると、健康に良いかどうかについては触れられていないけど、少なくとも飲み過ぎは身体によくなくてその量は人や状況によって異なる、というところです。
結局、どれぐらい飲むのがいいの?という明確な答えはありませんが、健康日本21の目標は「男性40g/日未満、女性20g/日未満」となっているので一つの基準とはなるかもしれません。
疾病別での飲酒量について
さて、糖尿病や高血圧症のある方の基準について各ガイドラインをまとめてみました。
参考文献