エビデンスの無い医療は悪か?
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今回のテーマはエビデンスの無い(弱い)治療についてです。
正しい医療情報とは何なのか、質の高いエビデンスとは何かなどについて考えていきたいと思います。今回の内容については科学的な事実と言うより、私の意見が多く含まれています。
目次
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身近に潜むエセ医療
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「論文に書いてあるから」だけでは足りない
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エビデンスがない医療は受けるべきではないのか
身近に潜むエセ医療
みなさんはどこから健康に関する情報を手に入れていますか?インターネット、テレビ、友人、広告、医師や看護師、様々あるかと思います。特にインターネットは便利ですぐに必要な情報を得ることができます。インターネットにも様々あり、行政・自治体のHPからSNSまで様々です。例えば、脳梗塞の症状を調べようとしたときに、「"脳梗塞" "症状"」で調べると下記のようになります。
Googleで「脳梗塞 症状」と検索した際の結果
製薬会社やクリニックなどのHPが出てくるわけですが、どれもわかりやすくかかれています。脳梗塞の症状にどのようなものがあるかは医学書に書かれている内容と比べても確からしい事が書かれています。
しかし、断食は健康に良いのか?という情報を調べようとしたときに、「"断食" "健康"」などで調べるとほぼほぼエセ医療で情報が入り乱れて何が信じられるのかがわからなくなります。そもそもほとんどが根拠が書かれていない情報で話になりませんが、書かれていても根拠として言えないものばかりです。
脳梗塞と断食でこうした違いが生じるのは、脳梗塞は教科書に書かれているような科学的な事実について書かれているのがほとんどなのに対して、断食の話になると急に独自理論やあまり質の高くない研究結果ばかりの主張が展開されます。何か主張したいことがありきで書かれている内容がほとんどです。そうなると、自分で論文を読んでみようと思われる方もいるかと思いますが、注意が必要です。実は「論文に書いてある」というだけでは、その治療や薬を使えないことがよくあるからです。
エビデンスを示す情報は沢山あるものの、それを正確に解釈する手段がなければその情報を使う事は難しいです。
「論文に書いてあるから」だけでは足りない
私が医師になったのは2009年ですので、今年で14年目になります。医学部で習った医学知識もこの13年間で大きく変わっております。例えば糖尿病で言えば、私が医師になった時には糖尿病の飲み薬は10種類しかありませんでしたが、今は28種類もあります(参考文献 1)。これらの日々変わっていく新しい情報をアップデートするのに医療者が重要視しているのは「ガイドライン」と呼ばれるものです。「ガイドライン」はエビデンスの質が高い論文を集めて複数の専門家の意見をまとめたものです。この「ガイドライン」があらゆる病気の治療の指針になりますので、様々な病気の「ガイドライン」が存在します。
論文の質の高さはその論文の内容や形式によって左右されますが、下のエビデンスレベルのピラミッドが有名です。
EBM普及推進事業 (Minds)診療ガイドライン作成の手引き 2007
このうち、レベル1-2は複数の論文をまとめたものですので、レベル3より下が単独の研究となります。この臨床試験の中で最も質の高いランダム化比較試験が行われた論文にはどのような事が書かれているのかというと、例えば「治療薬Aの効果を示した論文」には「糖尿病を持った20-80歳の集団」に「治療薬Aもしくはプラセボをランダムに振り分けて投与した場合」「プラセボに比べて治療薬Aは有意に血糖値が改善した」という内容が書かれています。ここで重要なのは「じゃあ、治療薬Aは糖尿病に使えるか」というと、
それは値段や費用対効果、もしくは他の薬剤との関係などで条件が変化するため、糖尿病の治療として治療薬Aが推奨されるかどうかはこの論文だけではわかりません。つまり、論文を読んで理解してもその他の周辺知識がわからなければそれを利用する事が難しいという事です。
その点、ガイドラインにはどのようにするべきか、と言う点まで書かれています。糖尿病診療ガイドラインはかなり玉虫色で書かれてはいますが、それでも例えば炭水化物と糖尿病の項目は下記の様に書かれています。
糖尿病診療ガイドライン2019 食事療法
これを読めば周辺知識は最低限で理解することができます(それでも難しいですが)。
ただ、ガイドラインの欠点は常に最新ではないという点です。例えば糖尿病のガイドラインの最新は2019年で、未だ更新されていません。また、国内のガイドラインだけでは不十分な事が多いので海外のガイドラインも読む必要があります。
参考文献 1