運動が糖尿病を治してしまうそのワケ
今日の話は糖尿病と運動を「DNAのメチル化」をキーワードに掘り下げていきたいと思います。
DNAメチル化と2型糖尿病
まず、DNAメチル化という言葉を聞いたことがありますか?これは、私たちの体の中の遺伝子がどのように「読まれる」かを決定する化学的なマークのようなものです。具体的には、DNAの中の特定の部分にメチル基と呼ばれる化学物質が付くことを指します。これが付くと、その部分の遺伝子は働きにくくなることが多いのです。
2型糖尿病とは
2型糖尿病は、血糖値が高くなる病気です。この病気は、遺伝的な要因と生活習慣などの環境的な要因が組み合わさって発症します。糖尿病はインスリンというホルモンの働きが低下することで、体内の糖の利用がうまくいかなくなる病気です。インスリンは膵臓から分泌され、血糖値を下げる役割を持っています。2型糖尿病では、インスリンの分泌が不足したり、体がインスリンに対して抵抗性を持ったりすることが原因で、血糖値が高くなります。
DNAメチル化と2型糖尿病の関係
近年の研究によると、この病気の発症にはDNAメチル化の変化が関与していることがわかってきました。DNAメチル化は、遺伝子の発現を制御する重要なメカニズムであり、特定の遺伝子がオン(活性化)かオフ(抑制)かを決定します。糖尿病の患者さんでは、血糖値を調節するための遺伝子に対するメチル化が普通とは異なっているのです【1】【2】。
環境因子とDNAメチル化
例えば、肥満や食生活の乱れ、運動不足といった環境要因がDNAメチル化のパターンを変えることが知られています。これが遺伝子の働きを変え、結果として糖尿病のリスクを高める可能性があるのです。生活習慣がDNAメチル化にどのように影響するのか、具体的に見ていきましょう。
1. 肥満: 肥満は糖尿病の主要なリスク因子の一つです。脂肪細胞は炎症性サイトカインを分泌し、これが全身に炎症を引き起こします。この炎症がDNAメチル化の変化を誘導し、糖代謝に関連する遺伝子の発現を抑制することが報告されています【3】。
2. 食生活: 高脂肪食や高糖質食は、インスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病リスクを増大させます。これらの食事パターンは、遺伝子のメチル化パターンにも影響を与え、糖代謝を妨げる可能性があります【4】。
3. 運動不足: 運動不足は、インスリン感受性の低下を引き起こし、糖尿病リスクを高めます。定期的な運動が不足すると、DNAメチル化のパターンが変化し、糖代謝に関与する遺伝子の発現が抑制されることがあります【5】。
DNAメチル化のパターンは一度変わると比較的安定しているため、生活習慣の改善が重要とされています。例えば、食事の改善や運動習慣を身につけることによって、DNAメチル化パターンが正常化し、糖尿病のリスクを減少させることが期待されます。
運動によるDNAメチル化の改善
運動が健康に良い影響を与えることは誰もが知っていますが、その中でも特に興味深いのは、運動がDNAメチル化にポジティブな変化をもたらすことです。以下に、運動がどのようにDNAメチル化を改善するのか、そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。