肉体労働は健康に悪い?運動と健康の新事実
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今回のテーマは身体活動と健康です。
ようやく「健康は筋肉」らしいお話の出番です。
先日、Twitterで
https://twitter.com/muscle_penguin_/status/1604242261809979392?s=20&t=_22oOh-drzFNfVwmHsnfCg
とつぶやいたことに思ったよりも反響がありました。
今回はその話を深堀していこうと思います。
目次
・体を動かす事は健康に良い
・運動が難しい人はプラステンで日常生活動作を増やす!
・どんな内容でも体を動かしたら健康になる?
体を動かす事は健康に良い
みなさん、ご存じだと思います。「健康のために運動しましょう」と言う話は普遍的な事実です(参考文献 1)。具体的には総死亡率や循環器疾患による死亡率の低下、高血圧や部位別のがん、2型糖尿病の発症の予防、メンタルヘルス(不安やうつ症状の軽減)や認知的健康、睡眠の向上、および肥満の指標の改善などなど様々です(参考文献 1)。これだけ様々な健康効果が得られるのは運動のみでして、「健康のために運動しましょう」というのはその通りですね。
さて、運動にはどのような種類があるのでしょうか。これに関しては最近アメリカ糖尿病学会とヨーロッパ糖尿病学会が合同で発表(参考文献 2)した”四つのS”という分け方がわかりやすいのでそちらを紹介します。
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Sitting(座位行動)
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Stepping(歩数)
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Sweating(中高強度有酸素運動)
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Strengthening(筋トレ)
座位行動と言うのは座っていたり横になっていたりしている行動の事です。座っている時間が長い事は不健康に繋がります。ですので、座っている時間を減らす事、30分毎に座っている時間を中断する事が推奨されています。詳しくは以前、私が書いたLumediaの記事をご参照ください。
歩数は非常にわかりやすい指標ですね。1日1000歩増やすと死亡率が6-36%低下し、心筋梗塞などの病気が5-21%低下すると報告されています(参考文献 3)。ただし、この効果は60 歳以上では6,000~8,000歩/日まで、60歳未満では8,000~10,000歩が上限でそれ以上は打ち止めとなるという事に注意です(参考文献 4)。
そして、歩くよりも早い速度で行うジョギングやランニングなどの中高強度有酸素運動では中々目標が高く、中強度で週150分以上、高強度で75分以上となっています。ただ、この中高強度の有酸素運動はコロナによる入院や重症化リスクを減らすことが報告されています(参考文献 5)。大変な分、得るものが大きいですね。
最後は筋トレです。
筋トレは筋肉の量や筋力を増やすうえでは有酸素運動よりも有利で、筋肉量や筋力が落ちてきた中年以降では特に重要です。ただ、筋トレに関しては下の図にあるように1週間に置ける時間と死亡率低下効果に関してはJ字型の関係にあって、週に約40分で最大の効果が得られますが、140分以上を越えると逆に効果がなくなる事が報告されているので注意が必要です(参考文献 6)。
参考文献 6
運動が難しい人はプラステンで日常生活動作を増やす!
さて、ここまで来て、「そんなに難しい事色々できないよ~」と思われる方もいらっしゃると思います。そんな時に、ニートを増やすのが重要です。ニートと言っても、無業者(Not in Education, Employment, or Training)と言う意味のニートではありません。
田中茂穂:身体活動とエネルギー代謝.日本臨床 67:11-15,2009より大坂が改変
エネルギー消費量の内一番大きく占めるのは基礎代謝ですが、その次は運動以外の身体活動であるニート(NEAT:Non-Exercise Activity Thermogenesis)です。
座位時間を減らす、という事にも繋がりますが、例えば掃除や洗濯、通学・通勤で歩くなど日常生活の中で体を動かす時間は大切で、運動が難しい人はこういった時間を増やすのも良い方法です。2013年に厚生労働省から出された「アクティブガイド」の中では「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」をメインメッセージとしています(参考文献 7)。ですので、私も以前より、「エスカレーターではなく階段を使いましょう」や「駐車場は遠いところに止めて歩きましょう」など患者さんに伝えていました。
どんな内容でも体を動かしたら健康になる?
さて、体を動かす事は健康に良い、という事がご理解いただけたかと思いますが、そんな中で近年、「肉体労働は体を動かしているのに健康には繋がらないんじゃないか」という論文が複数出てきました。ここでは昨年の4月に出された最新の論文(参考文献 8)を紹介します。
コペンハーゲンの一般人口調査に2003~2014年に登録されていた方をその後どういった病気になったり亡くなったりするかを中央値10年間追いかけた研究です。20~100歳の104,046人がこの研究に参加しています。この中で身体活動を余暇と仕事上に分けて確認し、心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、及びそれによる死亡)及び死亡と関連が見られたか調べました。