「腸活」の真実
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今回のテーマは腸内細菌と巷で流行っている腸活についてです。
腸活でダイエット!や腸内細菌に関する話題がメディアやSNSでよく見られます。腸内細菌とは何なのか、現時点でどこまでがわかっているのか、どこからがエセ医療なのか。最新の研究を踏まえて解説します。
目次
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腸内細菌とはいったいナニ?
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腸内細菌と病気の関係についてわかっていること
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腸活はどこまで有効なのか
腸内細菌とはいったいナニ?
意外に思うかもしれませんが腸の中と言うのは体の外という見方ができます。人間の消化管は口から肛門まで一本道で、ちくわのような状態です。そのちくわの穴の中はちくわから見ると外になりますね。人間の身体は外界と接するところには細菌叢(さいきんそう)と呼ばれる細菌の塊があり、例えば皮膚には細菌が常にいて、外界からのバリアの機能を果たしています。
腸の中にもそのような細菌叢が存在し、腸内細菌(叢)と呼ばれています。他の細菌叢の中で最も沢山の種類と数が存在し、300~1000種類で1gあたり一兆個の細胞がいるとされています(参考文献 1)。
これらの細菌のほとんどは嫌気性菌と呼ばれる酸素を必要としない細菌たちで酸素の届きにくい腸の中でも増えることができます。
また、腸内細菌は離乳したぐらいの時期に確立され、食事や抗生物質などから影響を受けなければ、かなり安定していた存在と言われています(参考文献 2)。
この腸内細菌は以前は体の中で外界からのバリアの役割をしているだけだと思われていましたが、近年色々な役割がある事がわかってきました。
例えば腸内細菌は食物繊維を発酵などによって処理し、短鎖脂肪酸などを作成する事によってエネルギー源にします(参考文献 3)。また、腸の発達に関係し、人間のためにビタミンを作ったり、ホルモンを作ったりもします(参考文献 4)。
中々研究が難しく、近年まであまりよくわかっていない事が多くありました。また、細菌以外にもウィルスや真菌なども存在するとされていますが、未だ詳細は分かっていません。つまり、現時点でも未知の部分が多いお話でもあります。
腸内細菌と病気の関係についてわかっていること
さて、そんな腸内細菌ですが、先述した通り、抗生物質や食事などの影響で腸内細菌に変化があり、それが病気の原因となる事があります。
もっとも有名で関係が深いのはクロストリジウム・ディフィシル感染症です。この感染症は抗生物質によって腸内細菌叢が破壊されることにより、クロストリジウム・ディフィシルという通常は僅かしかいない細菌が増殖することで発症します。
腸内細菌叢では様々な細菌がバランスをとっており、それが崩れてしまう事でこのような感染症が発症するのです。
治療は抗生剤の中止やクロストリジウム・ディフィシルに効く抗生物質の投与なのですが、そういった治療が効かない患者さんに糞便移植という方法がとられることがあります。これは健康な人の便に含まれている腸内細菌を病気の患者さんに投与する治療法です。この糞便移植で治療された重度または劇症のクロストリジウム・ディフィシル感染症患者 52人を対象とした研究では重度患者 19 人の治癒率は100%、劇症患者33人の治癒率は87%でした(参考文献 5)。
この糞便移植はまだ治療できる施設が限られており現時点で日本においては臨床研究レベルではありますが、クローン病・潰瘍性大腸炎、非特異性多発性小腸潰瘍、腸管ベーチェット病などに対する治療として期待されています(参考文献 6)。
また、腸以外の疾患を持つ方が健康な方と比べて特徴的な腸内細菌叢をしている事がわかっています。
実は私も大学院生の時にこの事について研究していたのですが、2型糖尿病患者さん97名と健康な方97名を比べた結果、2型糖尿病患者さんにはアクチノバクテリア門という細菌が非常に豊富でしたが、バクテロイデス門はそれほど豊富ではありませんでした(参考文献 7)。
また、肥満と腸内細菌の関係についても知られており、肥満のある方は健常な方と比べて、ファーミキューティス門が増加しており、バクテロイデス門が減少しています(参考文献 8)。そのため、このファーミキューティス門はデブ菌、バクテロイデス門はヤセ菌と呼ばれることもあります。これらの菌の増減は肥満者が減量する事で逆転し、リバウンドする事で元に戻るとされています(参考文献 8)。
(参考文献の後に「腸活はどこまで有効なのか」というテーマで続けます。)
ここまでの参考文献
参考文献1
参考文献 2
参考文献 3
参考文献 4
参考文献 5
参考文献 6
参考文献 7
参考文献 8