ワインは健康?ワインエキスパートが語ります!
今回のお話は満を持して?ワインと健康の関係です。
色々な所でお話していますが、私は大のワイン好きです。2019年に日本ソムリエ協会のワイン・エキスパートを取得しました。一次試験は選択試験、二次試験はテイスティング試験があり、合格率は4割ほどでした。テイスティング試験ではワインの生産国やヴィンテージ、ブドウの種類などを当てないといけないので中々大変です。
そんな私ですが、「ワインは健康にいいんだよ」という話はワイン仲間でもよく話としてでてきます。これは本当に真実なのでしょうか。
今回は「ワインと健康」について科学的根拠に基づいて説明していきます。
目次
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そもそもお酒は健康に良い?
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ワインはその中でも特に健康に良い?
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お酒の研究の制限と限界
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そもそもお酒は健康に良い?
少量のお酒を飲んでいる人は、"飲んでいない"か"多量飲酒をしている"方に比べて心臓病の発症や死亡(参考文献 1)と糖尿病の発症(参考文献 2)が少ないとの報告がされています。しかし、お酒は口腔がんや食道がんを筆頭に数多くの種類のがん(喉頭がん、大腸がん、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵臓がん、肺がんのリスクを上げる事も報告されています(参考文献 3)。また飲酒量が増えればリスクも上がるとされています。
ここでの飲酒量と言うのは「エタノール換算量(g)」という単位で考えます。例えばアルコール度数15%のワイン500mLのエタノール換算量は500mL×15%×0.8(エタノールの質量)=60g、となります。ですので、アルコール度数の高いお酒の場合はエタノール換算量が大きくなる、という事になります。ちなみに日本においてはエタノール換算量20gをお酒の1単位としています。
https://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html
健康日本21(参考文献 4)では1日当たりのエタノール換算量が男性2単位以上、女性1単位以上を「生活習慣病のリスクを高める量」としています。女性の方が男性よりもアルコールによる健康被害が起きやすいと言われていますがこれはこれは女性の体格の小ささ、体の水分量、アルコール脱水素酵素の力などが関係しているとされています(参考文献 5)。
ここで皆さんが知りたいのは少量のお酒は本当に健康なのか、つまり少量のお酒はお酒を飲まないより果たして健康なのか、という事ですよね?さて、先ほどの上限の量については二つの研究(参考文献 1, 2)を元にしているデータですので、これ以上飲むと心臓病や糖尿病を引き起こしやすくなるという量です。しかし、お酒による健康被害と言うのはこれらの病気だけではなく、例えば酔って転倒したりすることによる事故などもお酒による健康被害の一つです。それらを含めた研究が2022年のLancetという有名な雑誌で報告されています(参考文献 6)。
1990年から2020年までの15~95歳、204の国を調査しています。ここでは"理論的最小リスク曝露量"および"健康リスクが非飲酒者と同等となる摂取量"を推定しています。
ちょっとややこしいので、図を見てみましょう。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)00847-9/fulltext 大坂改変
こちらの緑の点が健康効果が得られる最大のお酒の量、赤い点がこれ以上飲んだら健康効果が失われる量です。
健康効果が得られる最大のお酒の量は右上のグラフですが例えば50-54歳の場合1日5gという事になります。60歳以上でも1日7.5g程と大変少ない量で、ワインの場合グラス1杯程度となります。
またこれ以上飲んだら健康効果が失われる量としては例えば50-54歳の場合1日30gという事になり、ワインの場合グラス3杯程度です。要するに50-54歳の人がワイングラス6 杯以上飲めばお酒によって不健康になるという事で、健康日本21に定められる量が安全とされるのは男性なら75歳以上、女性なら60歳以上という事になります。若い人が安全な飲酒量が少ないのはお酒による怪我や交通事故の頻度が高齢者よりも高いからです。これらは地域によっても変わるのですが、日本でも同様の結果です。
思ったより少なくて、この論文を読んだ時に切ない気持ちになった事を覚えています。
ワインはその中でも特に健康に良い?
さて、色々なお酒の中でもワインは特に健康に良いというのは本当でしょうか。
この先の目次
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フランス人の心臓病が予想値より低くなる理由
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お酒の種類とがんの発生に関連はあるのか?
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研究の限界①「お金持ちほど飲みすぎない傾向」経済的な要因について
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研究の限界② ワインに合わせる食べ物は?文化的な要因について