HIIT(高強度インターバルトレーニング)と健康

今はどこでも目にするHIITの健康効果について解説します。
筋肉博士(大坂貴史) 2024.01.15
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こんにちは、筋肉博士です。

実は今年のアメリカ糖尿病学会のガイドラインにHIITの項目ができました。

本日はHIIT(高強度インターバルトレーニング)と健康(主に糖尿病)についてお話します。

本記事は途中まで無料で読めます。ぜひご覧いただければ嬉しいです。

***

HIITとは?

まず、なんて読むのでしょうか?答えは「ヒット」です。日本でもヒットと呼ばれることが多いようです。

HIITは有酸素運動の一種です。短時間の非常に強度の高い運動と短時間の休憩時間の組み合わせを交互に行う運動プロトコールです。

まず基本的な知識として有酸素運動の評価は最大酸素摂取量の何%かという概念で考えられます。

運動強度のとらえ方(伊藤朗:図説・運動生理学入門,p.129,医歯薬出版,1990)

運動強度のとらえ方(伊藤朗:図説・運動生理学入門,p.129,医歯薬出版,1990)

それも踏まえてHIITは以下のようなイメージです

秒数や強度については色々なプロトコールがありますが、最大酸素摂取量(VO2max)の90%という強度がかなり高く、有酸素運動というよりむしろ無酸素運動に近いレベルの強度である点が重要です。

一般的に有酸素運動の効果は「強度×時間」です(詳しくは私の書いたLumediaの記事をご参照ください)。高強度の運動を継続するのは大変難しいです。また、スポーツ庁の調査でも運動が難しい大きな理由は「時間がない」ということですので、時間がかかる有酸素運動はやはり難しいということになります。

また、多くのガイドラインでも有酸素運動については「中等度以上の強度を週150分以上」か「高度の強度を週75分以上」と書かれており、時間がない人については絶望です。そんな時間がない方に向けて大変良いのがHIITということになります。

歴史的には1950年代に始まり、2000年頃より流行が始まり、2010年代には一大ブームとなりました。色々なバリエーションが存在し、有酸素とレジスタンスの組み合わせのようなものをあります。

HIITは主に体力の向上を効果的に行えるとしていて、2010年に発表された研究(参考文献 2)では週150分のランニング、筋トレと比べても体力の向上が良かったと報告されています。

参考文献 2

参考文献 2

HIITのやり方

先述の通り、HIITは高強度エクセサイズ+クールダウンの組み合わせで成り立っています。その中身については特に定められていません。ほとんどのトレーニングには機器を使いませんので、ランニング (屋外またはランニングマシン上)、ダンス、ローイング マシン、エアロバイク、などです。バーピーと呼ばれる複合運動などが使われることもあります。基本的には何でも良いですし、筋トレでも構いません。また、大きなスペースが要らないこともあって、自宅で実施することができるのがお手軽ですね。また、エクセサイズの時間とクール時間は予め決めますので、タイマーが必要なことは多いです。

HIITと似たようなものとしては、タバタトレーニングがあります。タバタトレーニングは立命館大学の田端泉教授が開発したプログラムです。

タバタトレーニングは当初はオリンピックのスピードスケート選手が対象でした。この研究(参考文献 3)では、20 秒間の超強度の運動 ( VO 2 maxの約 170% の強度) とそれに続く 10 秒間の休息を 4 分間(8サイクル)連続的に繰り返しました。結果、週4回のHIITは週5のトレーニング(VO2max70%×60分)と同様の効果が得られました。ただ、日本ではタバタトレーニングはHIITの一部として扱われる事が多いですが、170%の強度と強度が強すぎるため、厳密にはHIITの亜型として扱われることが多いです。ただ、この20秒+10秒の組み合わせはHIITのメニューでもしばしば登場します。

また、サーキットトレーニングといって複数の運動を休憩をはさみながらする運動もHIITに似ていますが、こちらは強度がバラバラであり、低い強度が混じっていても良い点がHIITとは異なります。

ということで、HIITの重要性はその強度にあり、強すぎても弱すぎてもいけないということになります。「HIITの処方とモニタリングのガイドライン」(参考文献 4)では、詳しくその方法について述べられています。

①最大脈拍数を評価する。測定がベストだが、難しければ「HR max  = 211 − (0.64 × 年齢)」(参考文献 5)で推定する。

② 最大心拍数の85-95%となる心拍数を計算する

③ 自覚症状を見ながら運動の強度を上げながら目標の脈拍数となるようにする。

脈拍数の評価にはApple Watchなどのウェラブルデバイスやランニングマシンについている脈拍計を使用します。

ちゃんとしようとしたら実はけっこう大変ですが、とにかく、「喋ることが殆ど出ないほど」の強度で実施するのが重要です。

参考文献 

HIITと健康

さて、主にアスリートの体力向上目的に開発されたHIITですが、健康への効果があることが最近明らかになってきました。

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